歯科の治療法は日々研究され進化しています。
その中で画期的な治療法ができることもあれば、効果が無く没になってしまった治療法もあります。
今回は没になり、忘れ去られてしまった治療法、『没治療』をご紹介いたします!
没治療その1、歯石を酸で溶かす
歯石はプラークが石灰化したものです。約80%はリン酸カルシウムなどの無機質でできています。
一度歯に付いてしまった歯石は歯ブラシでは取れないので尖った器具で削り落とすか、超音波振動の器具で剥がすかしなければなりません。
それ以外の歯石除去方法が無いかと、1939年にStonesが酸で歯石を溶かす実験を試みました。
歯石はカルシウムが含まれてるので、酸で溶けます。それと同時に歯のエナメル質やセメント質も溶かしてしまうために実用化できず、失敗に終わりました。
没治療その2、歯をシリコンでコーティングして歯石を予防する
1954年に Leung が歯の表面を色々なシリコンでコーティングして歯石が付かなくなるか実験をしました。
同様に1963年にHoffmanらが歯をイオン交換樹脂でコーティングして実験を行いました
どちらも試験管内で歯を人口唾液に漬けて歯石の出来具合を観察したそうですが、コーティングしていない歯と歯石の付き方に変わりがなく、失敗に終わりました。
たとえ、この実験が成功したとしても、実際の口の中でやると食事したらシリコンコーティングが取れてしまうような気もしますが…
没治療その3、抗生物質入り歯磨き粉
1969年に Volpeらが、抗生物質を歯磨き粉に入れて3か月ほど使用し実験したところ、なんとプラークと歯石を75%も抑制する効果が得れられました!
これだけ見ると画期的な発明ですが、抗生物質を長期間使用すると耐性を持った菌がでてきてしまうため、結局実用化されませんでした…
まとめ
今のところ、楽してプラークや歯石を除去&予防する方法はありません。。
抗生物質入りの歯磨き粉がプラーク歯石を75%抑制するとありましたが、実際歯ブラシだけで普通に磨いても50~70%のプラークを落とすことができるので、あまり意味は無いように思えます。
やはりこれからも日常的な歯のケアは「歯ブラシ」「フロス(糸ようじ)」「歯間ブラシ」が三種の神器として君臨し続けるのでしょうか…
参考:木下 四郎 「歯垢 と歯石 の抑制 について」 口腔病学会雑誌,37/1,1 1970