昔の歯科医療その1(アマルガム)

昔の歯科医療

歯科医療は日進月歩で新しい材料や治療法の研究が行われ、新しいものが開発されています。

しかし、その一方で新しい技術や材料の登場により廃れてしまったものも存在します。

今回は、今の歯科治療では使われる事がなくなってしまったものについて紹介したいと思います。(不定期連載予定 ^^;)

第1回目は歯科用アマルガムです!

アマルガムとは

アマルガムと言う言葉を聞いたことはありますか?

おそらくアマルガムを使った歯科治療を受けた事があるのは35歳以上の人だと思います(令和元年現在)。

今は小さい虫歯の場合は歯医者さんに

「虫歯を取って白いプラスチックの詰め物しますね~」

と言われる事が多いですが、この白いプラスチック(コンポジットレジン)が実用的になる前は金属を歯に直接盛って詰めていました。これがアマルガムです。

どうやって金属を直接歯に詰めるの?

と思われるかもしれませんが、

アマルガムというのは水銀を含む合金です。日本の歯科用アマルガムには

  • (65%以上)
  • (25%以上)
  • (6%以上)
  • 亜鉛(2%以下)

が含まれています。上記成分だけで98%なので水銀は2%以下です。

これらを使用直前に混ぜることにより、アマルガム合金となり最初は雪のように柔らかいけれども、5分くらいで結晶化が起こり固まってしまうのです。

歯科用アマルガムの歴史

ドイツでは1610年に初めて使用されましたが、日本で初めてアマルガムという言葉を使用されるようになったのは明治12年でした。

噛む圧力と唾液に常にさらされ金属にとって劣悪な環境ともいえる口の中で、錆びたり変形することが少ないアマルガムは当時はとても重要な金属でした。

その後、1970年代ごろまでは主要な歯科材料として世界中の歯科医師に使用されてきました。

コンポジットレジンの出現とアマルガムの衰退

コンポジットレジンと言うのはレジン(樹脂)にシリカ等の硬い材料を混ぜた物です。

1965年には米国で製品化され、1967年には日本に輸入されました。

しかし!

当時のコンポジットレジンは現在のものとは比べ物にならないほど脆く、噛む力に耐えられないシロモノだったので、前歯のちょっとした虫歯を治す程度にしか使えない材料でした。。

それでも、歯科医師や患者さんにとって歯と同じ白い色の材料は魅力的…、その後さらに研究が進み、より強い材料に進化していきました。

そして、強度の高い製品が出るごとにアマルガムは使われる機会が減っていきました。

さらに追い討ちをかけるように、アマルガムに含まれる水銀が健康に問題があると言われるようになり、アマルガムの風当たりはさらに強くなります。

国内で歯科用アマルガムを作っていたメーカーは次々と生産を中止していき、今では歯科用アマルガムは国内生産されていません。

そして現在…

私は歯医者になって9年ほど経ちますが、アマルガムを使った治療はした事がありません。

そもそも歯科大学のカリキュラムからアマルガムは削除されてしまったので習った事もありません。

今現在アマルガムを国内で購入する事がほぼ不可能に近いので、別に何も困ったことはないですが…

錫や銅が含まれ、金属アレルギーを起こしやすいなどの欠点がありますが、アマルガムにもコンポジットレジンより優れた点があり、割れにくいとか銅の殺菌成分で虫歯になりにくいなどがあります。また、安価で丈夫な材料であることからアメリカやインドなどの国では未だに使用されています。

高齢の患者さんの中には、半世紀前に詰めたアマルガムが現在も問題なく使えているケースがいくつもあります。

現在もアマルガムを使用した治療をやっている歯科医院が日本にあるのかネットで調べてみましたが、見つけられませんでした。

新しい技術の進歩の裏には、忘れ去られて消えていくものがある事を覚えておいてください!

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