「現代人はアゴが小さくなり、親知らずが退化して無くなりつつある」
こんな話を聞いた事はありませんか?
実際はどうなのか、論文から調べてみました。
各時代ごとの親知らずが欠如している人の割合
実際に検診を行ったり、古い人骨を調べた結果から、親知らず(第3大臼歯)が欠如している人の割合を調べた論文があります。
その論文によると…
ちなみに昭和時代①は1930年代、②は1950年代、③は1970年代、④は1980年代です。
なんと現代(と言っても平成ですが…)は縄文時代に次いで、親知らずの欠如率が低い。すなわち日本の歴史上2番目に、親知らずが生えている人が多い時代という事になっています。
グラフにするとこのようになります。
一体なぜこのようになるのでしょう?
日本人の親知らずが欠如し始めたのは弥生時代から
縄文人は顔の骨格が角張っていて、ワイルドな風貌をしていました。
当然、親知らずもしっかりあって、欠如している人はとても少ないです。
しかし、弥生時代になると中国大陸や朝鮮半島から、稲作や青銅器,鉄器の技術と共に、渡来人と呼ばれる人々が入ってきて、日本に定住するようになっていきました。
この渡来人は、縄文人と比べて親知らずが欠如している割合が多く、この体質が遺伝しやすかったため、縄文人との混血が進むと共に日本人の親知らずが欠如してきた、と言われています。
栄養状態が悪いと親知らずが作られない
明治大正,昭和初期にかけて親知らずが欠如している確率が高くなっています。
通常であれば、3歳前後に親知らずの元となる「歯胚」が作られるのですが、この時期に栄養不良だったり、栄養が偏っていると歯胚が作られず、親知らずが欠如してしまう確率が高くなります。
これは、恐らく明治大正や昭和初期の人は栄養状態が悪かったためと思われます。
親知らずがまっすぐ生えてこない人は現代には多くなっている
現代人は昔の人に比べて、アゴが小さくなり、歯が大きくなる傾向にある事は確かです。
そのため、親知らずが生えるスペースが無くなってしまい、曲がって生えたり、骨の中に埋もれてしまうことは多くなっています。
恐らくですが
「現代人はアゴが小さくなり、親知らずが退化して無くなりつつある」
というのは、親知らずが曲がって生えたり、埋もれて見えないので、親知らずそのものが無いと勘違いしてしまったのだと思われます。
まとめ
現代人は昔の人(弥生時代以降)と比べて、親知らずを持たない人が増えたという事はない。
しかし縄文人は遺伝的に、親知らずを持ってる確率が高い。
・参考資料
日本人第三大臼歯欠如頻度の時代的変化:山田博之 他、Anthropological Science、2004